金沢大学
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研究

ウイルス感染症,特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症/AIDSの病態を解明し,ウイルスの感染防止ならびに感染後の発症予防に役立てることを主たる目的として,ウイルス学的,公衆衛生学的ならびに国際保健学的アプローチを行っている。現在,HIV感染が爆発的に拡がっているサハラ砂漠以南のアフリカ(東・中央アフリカ),フィリピン,並びにベトナムの研究グループと国際共同研究を展開している。当該期間には主に次のテーマの研究を行った。

A) 非B型HIV-1感染小児における薬剤耐性関連遺伝子変異の出現

非BサブタイプHIV-1に感染しており,逆転写酵素阻害剤(RTI)による治療に抵抗性を示したケニアのエイズ孤児のウイルスRTI耐性関連アミノ酸変異の出現パターンを明らかにすることを目的とした。ケニアのN孤児院(ナイロビ市)において抗レトロウイルス療法を受けているHIV感染小児のうち治療不応例21例から経時的に採取された血漿を対象にウイルスの遺伝子解析を行った。非BサブタイプHIVでは,サブタイプBとは異なるRTI耐性関連アミノ酸変異の出現パターンをとる場合があること、また薬剤耐性HIV-1の母子感染の存在を明らかにした。また,ケニア地溝北壁におけるネビラピン単剤によるHIV-1母子感染予防後の薬剤耐性関連遺伝子変異の頻度を明らかにした。近年サハラ砂漠以南のアフリカでは抗レトロウイルス療法 (ART) の導入が急速に進んでいるが,カメルーンにおいて薬剤耐性HIV-1の出現を初めて明らかにした。

B) エイズ発症に影響を及ぼす因子の解明

HIVコレセプター遺伝子多型を始めとする種々の宿主因子とHIV母子感染児の病態進行速度との関係,ならびに薬剤代謝関連遺伝子多型とARTの有効性との関係を明らかにすることを目的として,ナイロビ市(ケニア)のエイズ孤児院に入所しているHIV母子感染児を2000年から定期的に追跡調査している。HIV-1感染者の約半分でHIV-1の使用するコレセプターがCCR5からCXCR4に変化する。このようなHIV-1のコレセプター使用の変更が抗レトロウイルス療法(ART)によって促進されるかどうかを明らかにするために, HIV-1感染小児81人のウイルスEnv-V3アミノ酸配列を経時的に解析した。HIV-1感染小児ではウイルスのCCR5からCXCR4へのコレセプター使用の変更はARTではなく,病態促進に関与する因子に影響を受けていることが示唆された。また,ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による子宮頸部細胞異形成に及ぼすHIV感染の影響を明らかにした。日本の血友病患者の病態進行速度に影響を及ぼす種々の宿主因子の検討を行い, RNATES –28Gがエイズ発症遅延と有意に相関があることを明らかにした。

C) ベトナム北部における薬剤耐性HIVの現状と推移

2003年以降、ベトナムにおいてもARTの導入が急速に進んでおり、薬剤耐性HIV株の出現・蔓延が危惧されている。そのため、北部ベトナムにおいて薬剤耐性HIV株のモニタリングを行っている。2007年にべトナム北部ハイフォン市で流行しているHIV-1はCRF01_AE(98.3%)が主であり、薬剤耐性HIV-1が2.9%(プロテアーゼ阻害剤(PI)耐性:0.3%,逆転写酵素阻害剤(RTI)耐性:2.6%)に認められた。また,2008年にハノイ市及びその他ベトナム北部地域でのHIV薬剤耐性調査を行ったところ,流行しているHIV-1は全てCRF01_AEであり,薬剤耐性HIV-1率は6.4%(PI耐性:2.2%,RTI耐性:4.3%)であった。

D) べトナムのHIV感染小児における薬剤耐性HIVに関する研究

べトナム北部のHIV感染小児における薬剤耐性追跡調査を国立小児病院(ハノイ市)で行っている。同病院では約390名のHIV感染小児(約150名が抗レトロウイルス剤で治療中)をフォローアップ中である。現在までに解析したウイルス121株は全てHIV-1 CRF01_AEであった。抗レトロウイルス療法中の児の約15%(12/80)が治療不応例であり,既知の薬剤耐性関連変異が認められた。未治療HIV感染児41名では薬剤耐性関連変異は認められなかった。

(E) フィリピンのHIV流行阻止のためのハイリスク集団把握と流行予測の試み

フィリピンにおけるHIV感染(流行)源の特定と今後の流行動向の検証を目的にしている.検証の方法として,以下の作業仮説を立てた.(1) アジアのHIV流行状況を鑑みると,フィリピンのHIV感染流行は血液媒介経路で始まると想定される。(2) HIV感染は,HCV感染と同じように国内に侵入し同様の経路をたどって蔓延する。(3) 既に広がっていると推測されるHCVの伝播の様子を解析することが,将来のHIVの伝播経路を推定するのに役立つ。現在,この一連の仮説の検証作業を継続している。

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